2023.04.06 TEENAGE DREAMS  =TAKESHI=

ティーンエイジドリーム。
誰にでも10代はあって、その人それぞれにティーンエイジドリームは存在するよね。
みんなにとってのティーンエイジドリームはどんなものでしたか?
上田剛士にとってのティーンエイジドリームが詰まった作品がカバーアルバム「TEENAGE DREAMS」です。

10代の頃に受けた刺激は、その人の人格形成に大きな影響を及ぼす。
自分にとってその中心は音楽で、その中でもパンクロックがど真ん中でした。
今回、自分の影響を受けた曲をカバーしてみて、本当に自分はこの音楽達によって作られたんだなと再確認しました。
このアルバムの話は雑誌のインタビューやラジオでの話を聴いてもらうのが良いと思うので、
そこでは話をしていない作り始めた時の話を。

数年前に活動30周年という区切りのタイミングがあったんだけど、あまりそういう事に興味がない自分としては、
ほとんど気にしていなかったのです。

レーベル、スタッフからは何かやったほうが良いとの話もあったけれど、どうにもピンと来ない。
そんな中で出てきた話の中にあったひとつがカバーアルバムでした。

自分としては「うーん、どうだろう?」と否定まではいかずとも消極的な気持ち。
30周年で何かやるつもりもわかなかったので
「時間のある時に試しに作ってみて人に聴かせても良さそうな物が出来そうだったら言うよ」と、お茶を濁して済ませていました。

そんな中、世界的なパンデミックとなったコロナウイルスの影響により世界は変わり、当然ながら自分もその影響下におかれました。
モノづくりをする身において、その環境の中で、その時の音を作らない訳にはいかず、story of Suite #19の制作に没頭しました。
音楽家としての宿命みたいなものかな。

そんなシビアな感覚の制作のかたわら、息抜きのように始めたのがカバー曲の制作でした。
ほぼ趣味のような物で誰かに聴かせるものになるとは思えずに始めました。

最初に録ったのはNEW KIDS IN THE CITY。
アルバムでも1曲目にもってきたジャパニーズパンクロックの名曲です。
単純にこのベースを自分の音で弾いてみたい、という軽い気持ちで録り始めたんだけど、
やってみたらエモーショナルで高ぶる、何とも言えない気持ちになったんだよね。
そして自分のサウンドのカラーを出すためにヘビーなキーで演ってみました。

好きだけどカバーした事は無かったので新鮮な驚き。
このベースに、あのギターが乗っかり、ドラムのビートはこうでシンセが響き、
そしてあのボーカルラインが流れてくる。
漠然と聴いていた時のカッコいい曲としてだけではなく、音楽的に分解してみて、さらにこの曲の世界に引き込まれていました。
痺れたんだよね。

カバーアルバム、ひょっとしたら面白いかも、と思った瞬間でした。

続くアレルギー、スターリン、あぶらだこ、自分の好きな曲をSuite #19の制作の間に楽しみのように作り始めた。
集めた曲を自分の密かな楽しみとして聴く物として。

そして浮かんできたワードが「TEENAGE DREAM」。
そう、まさに10代のタケシくんの夢が詰まった音源でした。

この言葉が浮かんだ時に、このアルバムはすでに完成していたのかもしれません。
後は自分の夢をどんどん詰め込んでいくだけ。
INUもYMOもRCもアナーキーも、海外パンクからキュアーまで、なんでもアリ。
だって10代のタケシくんにはそれら全てが刺激だったのだから。
そして最後のピースとして、友であり指針でもあったJiaenをカバーする事で、このアルバムは出来上がりました。

みんなには、このアルバムを手にして10代のタケシくんの夢の追体験をしてもらう事と同時に、
ぜひ自分の10代の夢を思い出してみてほしい。
切なく懐かしく、そして少しばかりの恥ずかしさと共に。笑

そして、その頃の夢に負けないくらいの夢を今も持っていけたら最高だよね。

最後に、初回盤ブックレットの中で記した高橋幸宏さん、鮎川誠さん、ワカさんに続いて、
坂本龍一さんの悲しいお知らせもきてしまいました。

坂本さん、ありがとうございました。