221003 猪木ボンバイエ!  =TAKESHI=

昭和の小学生男子はみんなプロレスが好きだ。
みんな、は語弊があるかもしれないけれど、まぁ大抵は大好きだったはず。

最初に好きになったプロレスラーはテリーファンク!
古い!
ドリーファンクはそうでもなかったので、見た目重視ということなのだろうか。
子供は正直だ。

その後はスタンハンセンは外せない。
今でもテーマ曲を聴くと盛り上がる。
ブッチャーは怖かったし、タイガージェットシンは怖かったし、アンドレはデカかった。
名前が「上田」なだけで「馬之助」と呼ばれることもあった。
そんな時代。

チャンネル権が子供に無かった昭和の我が家では、ゴールデンにやっている新日は見られずに全日が多かった。
でも、もちろんアントニオ猪木は知っていた。
燃える闘魂だ。

子供の頃に刷り込まれた感覚はそう簡単に消える事はなく、
大人になってもプロレスラーに対する何とも言えない憧れ感、ヒーロー感はずっとある。
総合格闘家に対する感覚とは少し違う、なんとも不思議な感覚だ。

それは、大人になったある日、リハーサルスタジオに向かう途中で見た光景。

その時は少し渋滞気味だったので、ゆっくりと車を進ませていた。
空冷ワーゲンの小さなフロントガラスの向こうから、ちょっと遠近感がおかしくなる程大きな人間が現れた。

猪木だ!!!!!

引退間近、最後の試合に向けてランニングをしているアントニオ猪木だった。
足を少し引きずりながらゆっくりと走る猪木。
たしか足を怪我をしているという話だったので、妙に納得した。

オレの中の小学生タケシが突然目覚めた!
めっちゃ笑顔で猪木さんの走る姿を見送った。
とても興奮した事は言うまでもない。
しかし車を止めてビンタしてもらう為に走るような事はしていない。

猪木さんは大きいけれど、道の向こうから走ってくるその姿は、とんでもなく大きく巨大に見えた。
もちろん目の錯覚だけど、もう3メートルくらいあるんじゃないかという感じだ。
それがアントニオ猪木という特別な人間のオーラなのかもしれない。

その錯覚を経験しただけで、何だかすごい人間がいるものだと納得した。

猪木ボンバイエ!!!
ご冥福をお祈りします。

余談だが、もう1人すごく大きいレスラーを見たことがある。
飛行機に向かう為にスロープを歩くオレの目の前を進んでいたのは、ジャイアント馬場。
なんと馬場さんと同じ飛行機だ。
錯覚ではなく、ホントにデカい。笑
馬場はデカすぎて飛行機の翼に手を入れて飛行機乗ってると言う話があった。
この時もオレの中の小学生タケシはワクワクした。

その旅先で、大きなショピングセンターの目の前に、また別のプロレスラーが立っていた。
ラッシャー木村だ。
ラッシャーさんはそのままタクシーに乗ってどこかに走って行った。
言うまでもなく、その先に待っているのはアニキ(ジャイアント馬場さん)だろう。
いや、そうでなくてはならない。
もちろんオレの中の小学生タケシはワクワクしまくりだった。