2017.02.28 この世界の片隅に  =TAKESHI=

少し前に観た映画『この世界の片隅に』。
感想を書くのは公開が終わってからと思っていたけど、まだ公開も続きそうなので、ネタバレしない程度に。

僕にとって、観て良かったと思う映画でした。

戦争をテーマにした映画は多いけれど、この映画は他とは少し違っていて、とてものんびりとした空気がずっと続いていく。
それは、ひょっとしたら当時の一般の人たちの空気に近いのではないかと思いました。

物語の始まりは昭和8年。
僕の父が生まれた年と同じ、徐々に太平洋戦争への空気が高まっていた頃。
僕は、両親が子供時代に戦争を体験していることや、祖父が軍服を着て戦闘まで経験している事を不思議に思う所がありました。
僕の知る限り祖父は優しく、父は厳格な方ではあったけれど、母はとてものんびりとした今で言う”天然”のような人なので、戦争の時代のイメージとは誰も繋がりません。
東京に住んでいた母は空襲も経験していて、突然やって来たB29から逃れる為に電車の下に祖母と姉妹たちと隠れて過ごした話などを聞いても、どうにも緊張感が伝わって来ない話ぶりなのです。

でもその当時の人たちの感覚や空気を、この映画を観て少し分かった様な気がしました。

戦争はある日、劇的な変化と共にやって来て、突然モノクロで悲惨な時代に突入するわけではない。
いつの間にか、いつもの日常を続けているうちに始まり(映画でも気をつけていないと、いつ戦争が始まったか分からない)、
そしてその戦争がある毎日がいつの間にか日常になり、いつの間にか爆弾が降って来て(もしくは降らせる方になっていて)、
そして悲惨な光景を目の当たりにする日がやってくる。

それが現実なのかもしれない。

祖父が亡くなる前(20年は前の話になるけれど)「今は戦争前の雰囲気に似ている」と言っていた事を思い出します。
祖父のその予感は幸いな事に(日本にとっては)現実にはなっていないけれど、この戦争とは程遠いと思っている日常のすぐそこに落とし穴がある事を言っていたのかもしれません。
そこで僕らができる事は、その空気に流されてしまわない事だろうと思う。
今、僕らが普通だと思っている事の中に潜んでいる危険があるのかもしれません。

そして僕らは、現実に今もこの世界の片隅に爆弾が降る時代に生きている。
祖父や両親たちの姿を重ね合わせて観た事で、僕にその事を改めて強く思い起こさせてくれる映画でした。